最近、話題に上がることが多くなった「夜間低血糖」。睡眠中に中途覚醒したり、歯ぎしり、寝汗などなど睡眠の質を落とす原因になっていることが多いのですが、まだまだ認知されていないのが実情です。なので、この記事では夜間低血糖の症状の特徴やその原因、対策についてまとめてみました。寝る前の補食はするべきか?はちみつはどうやって活用すればいいのか?検査方法は?などなど、この記事を読んでいただければ一通りのことがわかりますので、ぜひじっくり読んでみてください。
目次
1.夜間低血糖の症状チェックリスト
- 寝汗をかく
- 悪夢を見る
- 鮮明な夢を見る
- 起きてすぐ頭痛が起きる
- 起きてすぐ体がだるい
- 起きてすぐ手を広げにくい
- 朝は食欲がない
- 低体温
- 熟睡できない
- 夜間頻尿
- 夜中に目が覚める
- 歯ぎしり・食いしばり
- 日中の慢性疲労
- 日中の倦怠感
- 肩こり・腰痛
- 動悸
どうですか?けっこう意外なものも夜間低血糖からきている可能性があって驚いている人も多いのではないでしょうか?
上記のチェックリストにいくつか当てはまる人は夜間低血糖を起こしている可能性が高くなります。原因については後ほど詳しくお話ししますが、簡単にいうと「寝ている間にアドレナリンが分泌されていて、体が過緊張状態になることによってさまざまな症状が出ている」状態です。
つまり、この過緊張状態をいかに起こさないようにするかがポイントになるわけですね。
2.夜間低血糖を起こす原因
ではなぜ夜間低血糖が起きてしまうのでしょうか?
そもそも就寝中は何時間も食事を摂らないのにどうやって血糖値を維持しているのかご存知ですか?
夜中の血糖値維持に主に使われているのが「コルチゾール」と「成長ホルモン」というホルモンになります。簡単にいうと、この2つのホルモンが不足すると寝ている間に血糖値を維持するのが難しくなるわけです。
夜間低血糖の原因は「コルチゾール」と「成長ホルモン」の不足の可能性が高い!これらの分泌が少なくなると寝ている間の血糖値維持が難しい!
ではなぜこの2つのホルモンが不足してしまうのか?
コルチゾールは就寝後、朝8時のピーク時に向けて徐々に分泌が増えていきます。逆に成長ホルモンは就寝後2時間くらいでピークを迎えると言われていて、その後は落ちていきます。つまり、コルチゾールと成長ホルモンがうまくバランスをとって夜間の血糖値を維持しているわけです。
1-1.コルチゾール分泌低下が血糖値維持を困難にする
ちなみに、コルチゾールがしっかり分泌されているかどうかは「唾液コルチゾール検査」をすることでわかります。こちらがコルチゾールの日内変動を表したグラフ。
朝8時ごろがピークで、夜に向けて徐々に下がっていってるのがわかりますね。この検査では夜間のコルチゾールレベルはわかりませんが、日中のコルチゾール量が低下していれば夜間も低下していると考えるのが自然です。
コルチゾールは「副腎」から分泌されます。腎臓の上にちょこんと乗っかっている臓器です。
ストレスや外傷、炎症が強い人などはコルチゾールの分泌が低下します。コルチゾール分泌が低下するということは血糖値維持も難しくなる。その結果、夜間低血糖を起こしやすくなるわけです。副腎機能が疲れちゃってるということです。
1-2.成長ホルモンの不足も低血糖を誘発
次にこちらが成長ホルモンのグラフ。
就寝後2時間くらいでピークを迎えているのがわかります。そして最も睡眠の質が高いノンレム睡眠のときに成長ホルモンがより多く分泌されるそうです。なので、入眠後の30分から1時間あたりの睡眠の質がカギを握っています。
もし昼間に精製糖質たっぷりのジュースやお菓子を暴飲暴食したり、寝る前にスマホを見過ぎていたり、昼間に興奮し過ぎたり、貧血を起こしていたりすると、日中に過剰な交感神経刺激が起きてしまい、熟睡できなくなります。結果的に夜中の成長ホルモンもうまく分泌できないし、血糖値維持も難しくなるという悪循環に陥ります。
夜更かししてゲームしてると「お腹空いてきたなぁ。何か食べたないなぁ。」と感じた経験はありませんか?これなんかまさに成長ホルモンが出ていないことが原因で血糖値を維持できていないから脳が糖質を欲している状態です。
副腎疲労があるとコルチゾールが不足しやすい!その結果、血糖値維持が困難に…。日中の過剰な交感神経刺激でも成長ホルモンの分泌に悪影響が出て夜間低血糖を起こしやすいので要注意!
問題はここからです。コルチゾールや成長ホルモンの不足で血糖値が維持できない状態になると、人は血糖値を維持するために次なるバックアップシステムを働かせます。それが「ノルアドレナリン」と「アドレナリン」。
この二つのホルモンは体に様々な症状を出しやすいんです。例えば、不安感や焦燥感、感覚過敏などもそう。上記の「夜間低血糖の特徴的な症状」に書かれている内容はまさにこれらのホルモンが原因で起きているわけです。
ちなみに、アドレナリンが体に及ぼす感情的な興奮は次の8つが特徴的。
- 怒り
- イライラ
- 焦燥感
- 不安感
- 恐怖感
- パニック
- 不眠
- 悪夢
これらが寝ている間に発動するわけですからさまざまな症状が出て当然ですよね。当然睡眠の質も悪くなります。
1-3.夜間の中途覚醒や歯ぎしりはアドレナリンのせい?
アドレナリンは血糖値が69mg/dlあたりまで下がると分泌される[*1]と言われています。実際に血糖測定器で測ってみるとわかりますが、副腎疲労の人は夜間に70を切ることが本当に多いです。
アドレナリンが分泌されれば交感神経が刺激され、過緊張状態になってパッと目が覚めてしまう。中途覚醒を起こしている人の多くがこのパターンです。闘争逃走状態になるわけですから睡眠の質が悪くなるのは当然ですよね。
夜間低血糖を改善すると夜間頻尿も改善したという話は多く聞きます。トイレに行きたくて起きているのではなくて、アドレナリンによって過緊張状態になって目が覚めた結果、トイレに行きたくなるというわけです。もちろん全部が全部ではないですが、こういうパターンも多いという話です。
歯ぎしりや食いしばりも同じ原理で、寝ている間に過緊張が起きることによって顎に力が入っている状態です。マウスピースなどで対応している人もいますが、夜間低血糖を改善することで歯ぎしりがなくなる人も多いので低血糖ケアは試してみる価値ありだと思います。
3.自宅でできる夜間低血糖の検査「リブレ」
夜間低血糖の検査は病院に行かなくても自分で簡単にできます。Freestyleリブレというセンサーを二の腕に貼り付けることで自宅で測定できちゃうんです。
こちらがフリースタイルリブレのセンサー↓
これをつけておくと2週間の間は24時間血糖値の推移を見ることができるので、寝ている間にどんな動きをしているのかが一目瞭然。こんな感じで二の腕に装着します。
で、スマホでスキャンすると血糖値を測定できる。
スマホがスキャンに対応していない場合があるのでご注意ください。対応していない場合はリブレリーダーを購入することになります。スマホの推奨環境についてはこちらのページでご確認ください。操作方法の詳細はフリースタイルリブレ使い方ガイドをご覧になってみてください。
過去8時間分のデータが記録されているので、朝起きてスキャンすれば夜間のデータも見れちゃいます。こんな感じで↓
このグラフでは80以下を基準にしていますが、基準値は設定で自由に変えられますので、上は140か150、下は70くらいにセットしておけばいいかなと思います。
4.夜間低血糖には寝る前の補食にハチミツがおすすめ!ただし…
4-1.ハチミツはどのくらいの量を摂ればいいの?
寝る前の補食に最適なのが「ハチミツ」。大さじ1杯ほどのハチミツを寝る前に摂ってみるとけっこう効果を発揮することが多いんです。大さじ1杯っていうとハチミツの重さにして大体22gくらい。
上の画像はクックパッドさんから拝借したものですが、こうやってみるとかなり多いように感じますよね。「こんなに食べたら血糖値爆あがりしちゃうんじゃないの?」と心配になる人もいると思いますが、僕の経験上やクライアントさんに試してもらった結果を見ても、爆あがりする人はほとんどいません。(もちろん個体差はあります。まれに爆上がりする人もいるので一度はリブレでチェックしてくださいね。)
夜間低血糖の人はこの量を寝る前に摂ってみて睡眠の質がどう変わるかを確認してみてください。
4-2.なぜハチミツがいいの?
砂糖は果糖とブドウ糖が結合してできた「二糖類」なのに対して、ハチミツは「単糖類」ってご存知でしたか?
蜜蜂が花から集めてきた花蜜は蜜蜂の消化酵素によってほとんどがブドウ糖と果糖に分解されている状態[*2]なんだそうです。つまり、これ以上分解する必要のない状態なので胃腸の負担が少なく、速やかに吸収されてエネルギーになってくれるという特徴があります。
さらに、“本物のハチミツ”であれば、フラボノイドやミネラルなども含まれているので、これらが血糖値の上昇を緩やかにしてくれる効果があるといわれています。むしろ、血糖降下作用もある[*3]と言う人もいるくらいハチミツは優秀なんです。
「本物のハチミツってなに?」という人はこちらの記事をどうぞ↓
4-3.肝臓のグリコーゲン貯蔵にも効果的
ハチミツは肝臓のグリコーゲンチャージにも最適です。こちらのグラフをご覧ください。
糖質の違いによって肝臓のグリコーゲンがどのくらい貯蔵されたかを表しているのですが、「ブドウ糖+果糖」の組み合わせは「砂糖」に次いで優秀ということがわかります。「ブドウ糖+果糖」ということはハチミツですよね。
砂糖もグリコーゲン貯蔵の視点で見れば優秀なのですが、ビタミンやミネラルが削ぎ落とされてるし、ハチミツよりも血糖値を急上昇させやすいことを考えるとハチミツのほうがより良いということになります。
ただし、ハチミツはあくまでも治療食。一生続けるものではありません。一時的に体が元気になるように活用するだけで、その間に根本的な改善をする必要があります。
寝る前に大さじ1杯のハチミツをなめる!しかし、あくまでも対症療法ということをお忘れなく!期間は1ヶ月間くらいに抑えて、その間に体調を整えていくことが重要!
ハチミツで一時的に元気になったらそのエネルギーを何に使うべきかというと「お昼寝」です。体の修復にエネルギーを集中させるんです。ここでちょっと元気になったからといって無理をするとかえって体調を悪化させることになるので要注意。
4-4.夜間低血糖の改善には日中の補食が重要
夜間低血糖を改善するためにまず考えるべきことは「日中いかにコルチゾールを節約できるか」ということ。夜間低血糖が起きているということは、ただでさえコルチゾールが不足している状態。そこに血糖値の乱高下があればコルチゾールを無駄遣いすることになるので余計に夜間の血糖値維持が困難になります。
なので、日中にこまめに補食をとって血糖値の乱高下をなくすことが最優先です。特に15時とか16時あたりは最も血糖値が下がりやすい時間帯なので、この30〜60分前に補食をしっかりと摂ることがポイント。こうすることで血糖値を上げるためのコルチゾール、ノルアドレナリン、アドレナリンを節約できるので副腎を休めることになります。
日中いかにコルチゾールを節約するかがポイント!補食をこまめに摂って日中の血糖値を安定させよう!
すると、だんだん副腎に余力が生まれてくる。夜間でも血糖値を維持できるようになってくるというわけです。
ちなみに捕食には何を食べるといいかというと、干し芋や甘栗、おにぎりなどを一口ずつチビチビ食べる感じで。一気に食べないようにしてくださいね。お腹が空く前に食べる。お腹が空かないから爆食いもしなくなるという好循環が生まれます。補食についてはこちらの記事にまとめています↓
ただ、捕食のやり方は個人差が大きいです。その人に合ったやり方を探していく必要があります。どうしてもうまくいかない人は個別カウンセリングでご相談いただいたほうがいいかもしれません。
5.まとめ
まずは夜間低血糖の症状チェックリストで自分に当てはまるかどうかを確認すること。もし当てはまるなら一度はfreestyleリブレでチェックしてみることをおすすめします。
そして、夜間に余力をとっておくためにも日中にしっかりと補食を食べて血糖コントロールを心がける。それでもうまくいかなければ飛び道具として「寝る前のハチミツ」を活用する。
実際に相談者さんにハチミツを試してもらうことが多いのですが、驚くほど元気になっちゃう人もいます。元気になったから飲みにいっちゃったりするパターンも多いんだけど、だいたいすぐに跳ね返ってきます。根本が改善してるわけじゃないですからね。少し元気になってきたらまずは昼寝!そして体を修復する!これを心がけることで体調が根本から上がってくることが多いです。
これでも一向に良くならない…という人は肝臓ケアや腸内環境ケアも必要かもしれません。この辺はまた別記事でアップしたいと思います。
また、栄養カウンセリングで相談も可能です。詳細はこちらからご確認ください。
【参考文献】
*1.Hypoglycemia
こんにちは!臨床分子栄養医学研究会認定カウンセラーのまつざき@s_matuzakiです。ではさっそく、夜間低血糖の症状からチェックしていきましょう!