体調不良の根底に「低胃酸」があるパターンは本当に多いけど、低胃酸を疑う人はまだまだ少ないし、認知されていません。疲労感が強い人、サプリを飲んでも一向に良くならない人はまず胃酸の状態を調べることをおすすめします。
この記事では、低胃酸の典型的な症状やセルフチェック法、また分子栄養学的にみた血液検査解析方法をできるだけわかりやすく解説したいと思います。
最後に低胃酸になる原因と改善方法もまとめましたので参考にしていただけたら嬉しいです。
1.低胃酸とは?
低胃酸とは、その名の通り「胃酸の分泌が不足している状態」で、日本人の約3割が低胃酸ともいわれているくらいかなり多くの人が該当します。
低胃酸の何が問題なのかというと、当然胃での消化がうまくいかなくなるので栄養素がしっかり体の中に入ってこない状態になります。特に「たんぱく質、鉄、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ビタミンB12、葉酸」などは低胃酸だと消化・吸収がうまくいきません。
それ以外にも胃酸には「殺菌作用」という大事な役割があるので、低胃酸だと細菌感染しやすくなります。腸で細菌が異常増殖してガスが溜まりやすくなったりもします。
つまり、低胃酸を改善しないとどんなにプロテインを飲んでもうまく消化できなかったり、鉄やマグネシウムなどのサプリを飲んでも体に入っていかないどころか、逆に悪影響を与えかねません。
2.低胃酸かどうかチェックする4つの方法
ということで、さっそく低胃酸チェックをしていきましょう!ここでは4つの方法をご紹介します。
- 症状から推測する
- 重曹胃酸テスト
- ビーツ尿テスト
- 血液検査データから推測する
ではそれぞれ解説していきます。
2-1.症状から低胃酸を推測する
まずは低胃酸の代表的な症状から確認してみましょう。下記の項目のうち、いくつか当てはまる人は低胃酸の可能性が高いと考えてください。
いかがでしょうか?当てはまる項目が多い人はぜひこの後のチェックも続けてやってみてください。
2-2.重曹胃酸テストによる胃酸セルフチェック法
胃酸がしっかり出ているかチェックする方法として有名なのが「重曹胃酸テスト」。これは重曹と胃酸が混ざり合うことで発生する炭酸ガスを使ったテストなのですが、ゲップが出るかどうかで判断するテストになります。胃酸が少ないと炭酸ガスが発生しないのでゲップも出ません。
【用意するもの】
- 重曹…2g
- 水…100ml
【手順】
- 朝起きて空腹の状態で、水100mlに重曹2gを混ぜた重曹水をゆっくり飲む
- 5分経ってもゲップが出ない場合は低胃酸の可能性あり
※重曹胃酸テストの直後は胃酸が中和された状態です。少し時間を置いてから食事をするようにしてください。
2-3.ビーツ尿テストで胃酸分泌を調べる方法
もう1つ胃酸の状態を調べる方法でおすすめなのが「ビーツ」という野菜を使った「ビーツ尿テスト」です。

ビーツの赤い色素「ベータシアニン」は胃酸でのみ分解できるという特徴を使って、ビーツを食べたあとに尿がピンク色になってしまう場合は分解できていない、つまり、胃酸が出ていない可能性が高いということになります。
- ビーツを2個以上食べる
- その後の尿の色を確認して、ピンク色になっていたら低胃酸の可能性あり
ちなみにiHerbにこんなのも売っています。ビーツの粉末です。これを使ってテストするのもありです。
2-4.血液検査データから推測する
最後に血液検査で低胃酸を推測する方法を解説します。やり方としては2つあって、ひとつは「MCV」という項目から推測する方法。もうひとつは「ペプシノーゲン検査」です。
2-4-1.MCVが92よりも大きい場合は低胃酸の可能性あり
MCVは「平均赤血球容積」のことで、赤血球の大きさを表す数値です。一般的な健康診断の項目には含まれていませんが、貧血の検査ではほぼ入ってくる項目です。
一般的には「80〜100」あたりが基準値になっていますが、分子栄養学的には「90」が理想値とされていて、「92」よりも大きくなってくると低胃酸の可能性があるとみます。
赤血球は葉酸とビタミンB12不足があると容積が大きくなってしまいます。大きくなり過ぎると抹消の血管まで赤血球がうまく巡らなくなってしまい、酸素がうまく運搬できなくなります。これを大球性貧血といいます。
日本人の場合は特にビタミンB12不足を疑うのですが、実はここで胃酸が関係してくるんです。ビタミンB12を吸収するには胃酸が必要なんです。つまり、胃酸が出ていないとビタミンB12を吸収できない。ビタミンB12が不足してくるとMCVがしっかりと成熟できずに大きくなってしまうという流れです。MCVが大きいということは低胃酸の可能性があるというように深読みしていきます。

MCVが92よりも大きい場合は低胃酸の可能性あり!
2-4-2.ペプシノーゲン検査から低胃酸を推測する
もうひとつは「ペプシノーゲン検査」。これは胃がんの前兆ともいわれている萎縮性胃炎を発見するための検査なのですが、ペプシノーゲンというのは消化酵素「ペプシン」の前駆体なので、この数値を活用して消化力を推測することができます。
ペプシノーゲンⅠ:60〜70
ペプシノーゲンⅠ/Ⅱ比:5以上
ペプシノーゲンⅠは理想値としては70くらい。少なくとも50は欲しいなといったところ。これを下回ってくる人は低胃酸の可能性が高くなります。またⅠ/Ⅱ比が5未満の場合は萎縮性胃炎の可能性があって、ペプシノーゲンⅠの数値は当てにならないということになります。ちなみに、炎症の原因としてはピロリ菌感染の可能性が高いので要注意です。
3.低胃酸の原因
3-1.ピロリ菌が低胃酸の原因になっていることが多い
低胃酸の原因といったらまずはピロリ菌感染を疑います。ピロリ菌は「ヘリコバクター・ピロリ」と呼ばれているもので、胃に生息する細菌です。

この菌が厄介なのは、ウレアーゼという酵素を出して胃酸を中和してしまうこと。中和されれば胃酸は薄まってしまうから消化吸収能力も落ちてしまうわけです。
ピロリ菌は母子感染でも移ると言われているので、家族にピロリ菌感染者がいれば自分も感染している可能性が高くなります。幼少期に井戸水を飲んでいた人も要注意です。
胃がんの原因にもなるピロリ菌。思い当たる節がある人はぜひ一度病院でピロリ菌の抗体検査を受けてみることをおすすめします。
3-2.胃酸抑制剤の長期服用はリスクが高い?
胃の調子が悪いとなんとなく胃酸抑制剤を飲む人が多いけど、実は胃酸過多じゃなくて低胃酸で調子が悪くなっている人も少なくありません。自己判断で胃酸抑制剤を飲むのは本当にやめたほうがいいです。
低胃酸の人が胃酸抑制剤を飲めば、さらに胃酸分泌を抑えてしまうことになるので、たんぱく質とかビタミン・ミネラルを余計に吸収できなくなります。その結果、栄養不足をさらに助長することにもなりかねません。
もちろん状況によっては必要な時もあると思いますが、長期で服用することのリスクはけっこう大きいと思っていたほうがいいです。そもそも胃酸抑制剤では根本的な解決にはつながりません。
3-3.精製糖質の摂り過ぎ
精製糖質の摂り過ぎは血糖値の乱高下を起こす可能性があるのは今まで何度もお伝えしてきましたが、血糖値の乱高下を起こすと自律神経も乱されます。自律神経が乱れれば胃腸の動きも低下するので低胃酸の原因になる可能性があるということになります。

上記の3つ以外にも「ストレス」や「早食い」、「冷たい飲み物」などが胃酸分泌低下の原因になっている可能性があるのでご注意を!
4.低胃酸を改善するための6つのアプローチ
4-1.よく噛んで食べる
噛むことの大切さについて以前にツイートした内容がこちら。
よく噛むだけで唾液も胃酸も分泌量が増えることがわかっているので、サプリ云々の前にまずはしっかり噛むことを実践しましょう。一口最低30回。僕はなるべく50回くらい噛むように意識してます。
噛むことで添加物を解毒してくれたり、発がん物質の働きも抑えてくれてしかもお金はかからない。意識しないともったいないです。
食事を口に運んだらその都度箸を置く。そしてゆっくり味わって唾液がたくさん分泌されていることを感じながら食べる。これだけで便通が良くなったり、栄養状態が改善してくる人も多いです。
4-2.食前に胃酸分泌を促す梅干しやレモン水を摂る
次におすすめなのが「食前に酸味のある食品を摂る」方法。例えば、梅干しとかレモン水、アップルサイダービネガーなどは様々な健康効果も期待できるので試してみる価値ありです。
ただし、胃が弱っている人は酸っぱいものを食前に摂ると胃が痛くなる人もいるので、その場合は無理しないようにしてください。胃が痛くなる人は「大根おろし」を活用するのもいいと思います。
ちなみに、アップルサイダービネガー(リンゴ酢)はマザー入りを選ぶことで健康効果が倍増するのでおすすめです。
あとは、酸っぱいものが苦手な人は「しょうが」とか「パセリ」も胃酸分泌を促してくれるので食前に食べてみるといいです。
4-3.食前・食事中に冷水を飲まない
冷たい飲み物は消化器系を消耗させると言われていて、消化を遅らせます。胃酸の分泌も低下する可能性があるので、食前に冷水を飲むのはやめたほうがいいです。
特にレストランに行くと、最初に氷を入れた冷水を出してくれるお店が多いですが、あれをグビグビ飲んでから食事をするのは胃腸の負担を高める可能性があるので、温かいお茶などを飲んで胃腸を温めるのがいいと思います。
4-4.消化酵素サプリ、胃酸補助サプリで低胃酸から抜け出す
胃酸の原材料はたんぱく質です。たんぱく質の摂取が不足すれば胃酸の分泌も悪くなります。そして、胃酸の分泌が悪くなればたんぱく質の消化吸収がうまくいかなくなるからたんぱく質食品を食べられなくなる。食べられなくなるからさらに胃酸も作れなくなる。こんな感じで負のスパイラルに陥っている人も少なくありません。
ではどうすればいいのか?ここでおすすめしたいのが消化酵素サプリ、胃酸補助サプリです。負のスパイラルから脱出するための突破口として活用するのはありです。
こちらが消化酵素サプリ。
たんぱく質、脂質、炭水化物の消化酵素が一通り入っているので、消化を手助けしてくれて胃腸の弱い人には強い味方になってくれるはず。
それからこちらが塩酸ベタイン。つまり「胃酸」です。
この2つのアプローチで胃腸の働きを助けてあげることで体調がグッとよくなってくるパターンは多いです。お肉を食べるときもこれらが消化を助けてくれるので、無理なく食べられるようになる人も多くて、負のスパイラルから抜け出すきっかけになります。
4-5.低血糖ケアをする
低胃酸の原因の一つとして多いのが「低血糖」。血糖値の乱高下があると自律神経が乱されます。交感神経が優位になる。体が緊張すると胃腸の働きは低下します。つまり、胃酸の分泌も低下してしまうわけです。
食前に梅干しを食べたり、よく噛んで食べるようにしても、低血糖を改善しない限りは根本の改善にはなりません。何度でもぶり返します。低胃酸対策には低血糖ケアがセットと覚えておきましょう。
4-6.姿勢が自律神経に影響?脊椎調整治療で歪みを改善
自律神経のバランスを整えるには姿勢も重要です。骨盤や背骨の歪みを改善することで自律神経のバランスが整い、副腎疲労や低血糖が改善し、結果的に胃腸の動きも良くなるというパターンも多いようです。
5.まとめ
低胃酸は軽視されがちというか、そもそも意識もしていないという人が多いです。でも、食べ物が最初に入ってくるところが胃ですから、胃の状態を整えることが本当は基本中の基本なんですよね。
腸活よりも肝臓デトックスよりもなによりもまずは胃の状態を整えること。胃が整っていないとプロテインを飲んでもサプリを飲んでも体に入ってきません。
何をやってもなんとなく体調が上がってこないという人はぜひ低胃酸に注目してみてください。
こんにちは!臨床分子栄養医学研究会認定カウンセラーのまつざき@s_matuzakiです。まずは低胃酸とはどんな状態のことなのか解説していきます!