「低血糖」と聞くと「糖尿病の人がなるもの」というイメージを持っている人は多いと思いますが、実は糖尿病じゃない人でも低血糖を起こしているパターンは多いということがわかってきました。
特に夕方や夜間は低血糖を起こしやすい時間帯。この記事では、なぜ夕方に低血糖を起こす人が多いのかを解説し、簡単な低血糖対策についてもお話ししていきます。夕方にコーヒーを欲してしまう人は要注意ですよ。
目次
1.糖尿病じゃない人でも低血糖を起こします
これ、まだまだ医療現場でも認知されていないことなんですが、糖尿病じゃない人でも低血糖を起こしているパターンは実はかなり多いです。
でも、まだ一般医学での常識にはなっていないので、このことをツイートしようものなら医師から激しいツッコミが入ったりしてけっこう面倒なことになることもあります。僕も以前、かなり高圧的な医師から「そんなものは存在しない!根拠を示せ!」みたいにつっ込まれたことがあって「あーやっぱりまだ認知されてないんだなぁ」と痛感したものです。分子栄養学ではもう常識なんだけどな…。
では、糖尿病じゃない人が低血糖を起こすとはどういうことなのか?簡単にご説明します。主な原因は2つ。「コルチゾール分泌の低下」と「インスリン抵抗性」です。
- コルチゾール分泌の低下
- インスリン抵抗性
1-1.コルチゾール分泌低下で低血糖を起こしやすくなる
コルチゾールというのはいわゆる「ストレスホルモン」と呼ばれているやつです。ストレスを感じたときに副腎から分泌されるホルモン。厳密にいうと「副腎皮質」から分泌されています。副腎というのは腎臓の上にちょこんと乗っかってる臓器です。
このコルチゾールには血糖値維持の役割があるのですが、現代人はさまざまな理由からコルチゾールの分泌能が狂ってしまっている人が多いんです。いわゆる「副腎疲労」ってやつ。正式には「HPA軸機能障害」といいますが、ここではわかりやすく副腎疲労という表現を使っちゃいます。
まずはこちらのグラフをご覧ください。これは唾液コルチゾール検査のグラフで正常な人の場合です。
コルチゾールは朝8時ごろにピークを迎えてお昼から夜にかけてどんどん低下していきます。これが正常な動き。しかし、副腎疲労の人は下のグラフのようにコルチゾールレベルが全体的に低下している状態。
コルチゾールはたんぱく質を分解して糖新生を亢進させます。コルチゾールレベルが低下するということは糖新生の力も弱まってしまうので、糖のレベルが下がってきても糖新生がうまくいかず、血糖値の維持が困難になるわけです。
ではなぜコルチゾールレベルが低下してしまうのか?その主な理由は3つあって「ストレス」「慢性炎症」「カフェイン・アルコールの過剰摂取」です。
コルチゾールレベルが低下する主な理由は次の3つ!
- ストレス
- 慢性炎症
- カフェイン・アルコールの過剰摂取
先ほどもお話ししたように、コルチゾールはストレスホルモンと呼ばれていて、身体にストレスがかかった時に分泌されます。適度なストレスを感じて適度にコルチゾールが分泌されることは大事なことですが、長期的の持続的な強いストレスはだんだんと脳を疲弊させてコルチゾール分泌を低下させてしまいます。その結果、血糖値維持が困難になる。
次に「慢性炎症」。コルチゾールには炎症抑制の役割があるので、身体のどこかに慢性炎症があるとコルチゾールが分泌し続けます。すると、持続的なストレス時と同じように脳が疲弊してきて結果的にコルチゾールレベルが低下してしまいます。
最後に「カフェインとアルコール」です。カフェインは副腎を直接刺激します。飲めば飲むほどコルチゾールが無駄に分泌されてしまうことになるんです。その結果、コルチゾールが不足して低血糖を起こしやすくなる。
アルコールは肝臓の代謝を抑制。糖新生も抑制されてしまう。お酒を飲みながら血糖値を測ってみるとよくわかるけど、けっこう色々食べても血糖値が上がらない人が多いんですよ。夜間低血糖も引き起こしやすくなるので要注意です。
1-2.インスリン抵抗性が低血糖を誘発
インスリンは細胞のドアを開けて糖の取り込みを助けてくれる存在。インスリンがしっかり機能してくれれば血中の糖はすみやかに細胞に取り込まれるので血糖値が乱高下することもありません。
インスリン抵抗性というのは、簡単にいうとインスリンは分泌されてるけど細胞のドアが開きにくくなっている状態。つまり、効率よく糖を細胞に取り込めない。すると、血液中は高血糖状態になるから急いで追加のインスリンを大量に分泌。その結果、血糖値が一気に落ちてしまい、低血糖になるという流れ。
ではなぜこのインスリン抵抗性が起きるのか?これも主に3つ理由があリマス。一つ目は「食生活の乱れ」。特に精製糖質の過剰摂取は問題で、食後の血糖値が急激に上がることでインスリンが大量に分泌されてしまいます。これ自体が低血糖を引き起こす原因にもなるのですが、問題は低血糖を起こすことによってノルアドレナリン、アドレナリンが分泌されること。これらのホルモンはインスリン抵抗性が高めてしまうんです。
もちろんビタミン・ミネラルが不足した食事もインスリン抵抗性につながるし、高脂肪食も脂肪肝を引き起こすことで低血糖につながります。食生活の乱れによる影響はめちゃくちゃ大きいということです。
それから、「極端な糖質制限」もインスリン抵抗性を起こす原因になります。炭水化物抜きダイエットとか一時期はやりましたが、糖質制限は耐糖能を悪化させることがわかっています。少量食べただけで体が過剰反応を起こすようになるんです。
ちょっとしか食べてないのにインスリンがドバッと分泌されて低血糖を起こしやすくなる。糖質制限はけっこうリスクもあるので安易にやらないほうがいいでしょう。
そして最後は「運動不足」。運動不足によってインスリン抵抗性を引き起こしてしまう可能性があるんです。運動することによって糖は細胞に取り込まれます。運動をしていない人はこの機能が働いていないことになるので血中の糖があふれてしまう。人間は元々動くようにできています。適度な運動は必要不可欠だと思ったほうがいいですね。
2.夕方に低血糖を起こしやすいのはなぜか?
クライアントさんの血糖値のデータを見ていても夕方に低血糖を起こしている人はけっこう多いです。特に15時とか16時ごろ。このくらいの時間帯は特に要注意。
下のグラフは肝臓のグリコーゲンレベルを表したもの。16時ごろにかなり低下している様子がわかります。この時間帯は肝グリコーゲンが最も枯渇しやすい時間帯。肝グリコーゲンが枯渇していたら血糖値の維持は当然難しくなります。
さらに先ほどのコルチゾールレベルのグラフでもわかるように、夕方の時間帯はコルチゾールも低下してきているので余計に血糖値が維持できない。
夕方の時間帯は肝臓のグリコーゲンも低下、コルチゾールも低下というダブルパンチで低血糖を起こすパターンが多いというわけです。
3.夕方にコーヒーが欠かせない人は低血糖の可能性大
カフェインは副腎を直接刺激します。低血糖を起こしている人にとってはドーピングみたいなもので、一時的に血糖値を上げてくれて元気になれるから無性に飲みたくなる。
でもこれ、コーヒーが好きというよりも、低血糖をごまかすために脳にカフェインを飲まされていると考えたほうが自然かもしれません。
夕方にコーヒーを飲まないと家事のやる気が起きない!という人は低血糖を疑ってみたほうがいいです。
4.夕方に低血糖を起こさないための対策
夕方に低血糖を起こさないようにするためにはやはり補食を食べることが重要です。おやつみたいなものですね。
かといって、耐糖能が悪化している人は何を食べてもいいというわけではなく、「良質な糖質」を選ぶ必要があります。そこで、補食に最適な良質な糖質をいくつか上げておきます。
ハチミツ、黒糖、干し芋、甘栗、鮭やおかかのおにぎり、葛粉スープ、ハチミツレモン水
こういったものを低血糖が起きやすい時間帯の30〜60分前に食べるようにする。もちろん摂りすぎには十分注意してください。「補食におにぎりを食べるといいですよ」という話をすると、おにぎり1個丸々食べちゃう人がいるのですが、それでは多すぎます。補食で摂る量であれば1口か2口で十分。それを1時間に1回とかこまめに摂る感じ。ハチミツだったら小さじ2杯程度。
少量をこまめに食べることで血糖値の乱高下が起きにくくなります。食後高血糖が起きなければインスリンの過剰分泌も起きないので低血糖を起こさなくなります。
ちなみに、夜間低血糖に関してはこちらの記事にまとめてありますのでチェックしてみてください。
こんにちは!臨床分子栄養医学研究会認定カウンセラーのまつざき@s_matuzakiです。夕方の低血糖が気になる人はこの記事をじっくりと読んで対策してみてくださいね!