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夜間低血糖を起こす2つの原因【分子栄養学的視点で解説します】

夜間低血糖というと「糖尿病の患者さんがなるやつでしょ?」と考える人はまだまだ多いようですが、実は糖尿病じゃなくても低血糖を起こしている人はけっこういるんです。

実際、私自身もそうでした。血液検査上では糖尿病の指標は正常値。お医者さんにも「まったく問題なし!」のお墨付きをもらったにも関わらず、リブレという24時間血糖測定器で測ってみたら夕方とか夜間に低血糖をバンバン起こしていたという事実…。

ということで、この記事では「夜間低血糖が起きる原因」にフォーカスして、できるだけわかりやすく解説していきたいと思います。低血糖症状に悩んでいる人はぜひ参考にしていただけたらうれしいです。

1.夜間低血糖の原因は主に2つ

まつざき

こんにちは!臨床分子栄養医学研究会認定カウンセラーのまつざき@s_matuzakiです。では、夜間低血糖が起きる原因についてみていきましょう!

「夜間低血糖ってなに?どんな症状なの?」という人はまずはこちらの記事から読んでみてください。主な症状を16個ピックアップしてみました。

では、夜間低血糖が起きる大きな要因は何か?結論から言ってしまうと主に次の2つです。

  • コルチゾール分泌量の低下
  • インスリン抵抗性

もちろん、ここでは副腎不全や糖尿病のように明らかな病因がある場合は除いていますからね。「医療機関では病気と診断されていないけど夜間低血糖の症状を頻発している」という人が疑うべきはこの2つということです。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

2.コルチゾール分泌量の低下が夜間低血糖を誘発する

コルチゾールとは、簡単にいうと「副腎から分泌されるストレス対抗ホルモン」のこと。これが血糖値の維持に大きく関わっています。

コルチゾールは、ストレスがかかると多く分泌されて、肝臓での糖新生を亢進させて血糖値を上げようとします。さらに、筋肉や脂肪細胞での糖利用を抑制することで血糖値が上がりやすくなり、ストレス時の脳機能低下を予防する役割があります[*6]。

ということは、コルチゾールの分泌が低下すると血糖値の維持が難しくなるので、夜間だけでなく日中にも低血糖を起こしやすくなります。

いわゆる「副腎疲労」の人は、さまざまな理由からコルチゾールの需要が高まっていて、相対的に足りていないという人もいれば、絶対量も低下してしまっているパターンもあります。

副腎疲労ステージ3の人は下図のように一日中コルチゾールレベルが低くなっている状態。

これでは血糖値の維持が難しくなってしまうのは当然ですね。

では、コルチゾールの分泌が低下する原因はなんでしょう?

コルチゾール分泌量が低下する4つの原因
  • 慢性炎症
  • 持続的なストレス
  • カフェインの過剰摂取
  • アルコールの過剰摂取

主な原因はこの4つ。それぞれ解説していきます。

2-1.慢性炎症は副腎疲労のもと?

慢性炎症はコルチゾール分泌を低下させる原因になる可能性があります。コルチゾールの大事な役割の一つに「炎症抑制」があって、炎症が持続してしまうとずっと分泌し続けることになるので副腎機能低下につながってしまうんです。ちなみに、ステロイド系の抗炎症薬として使われているのもこれです。

慢性炎症と言われてもピンとこない人が多いと思いますので、特に見過ごされやすい慢性炎症を5つ挙げておきます。

「脂肪肝」「ピロリ菌感染」「上咽頭炎」「下痢・便秘」「歯周病・歯根感染」。これらはどれも自覚症状に乏しいものばかりで、炎症が起きていても気づかないことが多いし、放ったらかしにされちゃうんです。

ちなみに、体のどこかに炎症があるかどうかを知るには血液検査がとても優れています。「CRP」や「血小板」などの項目から炎症の有無を知ることができるのですが、詳しくは別記事で解説しますね。

このような炎症があると、脳下垂体から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が放出されて、副腎皮質を刺激。その結果、副腎皮質からコルチゾールが分泌されるという仕組み。

これが一時的なものであれば特に問題ではなく、炎症を抑えるためにも体にとって必要なメカニズムなのですが、慢性炎症というのは何週間も何ヶ月も炎症し続けることになるので脳下垂体への負担が継続してしまうことになる。これが問題なんです。

慢性的な炎症があると脳が疲労して副腎機能が低下、コルチゾールの分泌も低下してしまうというわけです。

2-2.持続的なストレスはコルチゾール分泌を低下させる

持続的なストレスも慢性炎症とほぼ同じ仕組みでコルチゾール分泌低下を誘起してしまいます。

上の図解を見てもらうとわかる通り、「慢性炎症」の部分が「持続的なストレス」に変わっただけです。

コルチゾールは慢性炎症を抑える働きとともに、ストレスに対抗するためのホルモンでもあるので、ストレスがかかった時に放出されるもの。ストレスが継続すればコルチゾールが出続けることになるので、当然脳は疲弊し、いずれコルチゾール分泌も低下していきます。

適度なストレスは、判断力や行動力を高めるといった体に好影響をもたらしてくれるのですが、持続的なストレスは慢性炎症と同じように副腎や脳をいじめ続けることになるわけです。

また、ストレスがかかっている時はコルチゾールと一緒にアドレナリンも分泌されるので、胃腸は動かなくなり、消化吸収力は低下。結果的にエネルギー不足になるので副腎疲労が加速しやすいので厄介なんですよね。

2-3.カフェインの過剰摂取

カフェインは副腎を直接刺激して、コルチゾールやアドレナリンの分泌量を増やします。「ん?増やすならいいんじゃないの?」と思うかもしれませんが、すでに副腎機能が弱っている人にとっては副腎を酷使することになるので、一時的には元気になるかもしれませんが、それはあくまでもドーピングなんです。一時的に元気になるだけでその後にどっと疲れが来ます。

カフェインは飲めば飲むほど副腎を刺激してコルチゾールを無駄遣いすることになるんです。副腎機能が正常な人や肝臓が丈夫な人にとってはまったく問題ないですが、すでに副腎が弱っている人にとってのカフェインはNGということを知っておいてください。

カフェインを摂っていない時間帯はコルチゾールが出にくくなって血糖値の維持が困難になる。低血糖を起こしやすくなる。低血糖を起こすとコルチゾール、アドレナリンを欲してさらにカフェインを欲してしまう、という悪循環に陥ります。

2-4.アルコールの過剰摂取

アルコールは肝臓の代謝を抑制し、糖新生ができなくなります[*7]。つまり、血糖値が下がりやすくなるんです。お酒を飲みながら食事もして血糖値を測ってみるとよくわかりますが、血糖値は上がらないどころか、下がることもめずらしくないです。“食事をしているにも関わらず”です。

お酒を飲んだ後に〆のラーメンを食べたくなる理由もまさにこれで、血糖値が下がって尿をいっぱい出した後の体には、炭水化物と塩分たっぷりのスープの組み合わせは意思では抗えないほどの魅力を感じてしまうんです。

たらふく飲んだ日の睡眠の質が低くなりやすいのも、夜間に糖新生がうまくできないから睡眠中にアドレナリンが出て熟睡できなくなるというアルコールの仕業なんですよね。

アルコールを頻繁に飲んでいる人は低血糖を起こす確率が高くなるし、その都度コルチゾールを無駄遣いして副腎に負担をかけることになるということがご理解いただけたかと思います。

また、長期的なアルコールの過剰摂取は副腎を萎縮させてしまうそう。肝機能低下だけでなく、副腎を直接萎縮させてコルチゾール分泌を低下させてしまうので、やはり副腎疲労の人にとってのアルコールは要注意と考えておいたほうがよさそうです。

3.インスリン抵抗性と低血糖

コルチゾール分泌量の低下とともに夜間低血糖の原因になりやすいのが「インスリン抵抗性」。インスリン抵抗性というのは簡単にいうと「インスリンの効き具合」のことです。

インスリン抵抗性が高まると、インスリンの効きが悪くなるので細胞内に糖を取り込めなくなります。つまり、血糖値を下げられない状態ということ。血液中にブドウ糖が溢れかえってしまい、インスリンが大量分泌、一気に血糖値が低下して低血糖になるという流れです。

では、インスリン抵抗性が悪化する原因はなんでしょうか?

インスリン抵抗性が悪化する2つの原因
  • 食生活の乱れ
  • 運動不足

これもそれぞれ詳しく見ていきましょう。

3-1.食生活の乱れからくるインスリン抵抗性

3-1-1.精製糖質の過剰摂取

精製糖質といったら砂糖を思い浮かべる人が多いと思いますが、ここでは白米やパン、麺類も含めて考えてください。

これらの精製糖質を普段から頻繁に食べ過ぎていると、インスリンが大量に放出されます。これが長期間にわたると細胞は働き過ぎることになって、いずれ細胞がインスリンに反応しづらくなる[*1]そうです。

インスリン自体はたくさん分泌されているけど、細胞側に問題が起きてグルコースを取り込めなくなる。

また、精製糖質を一気に食べて血糖値が急上昇すると、インスリンが大量に分泌されて一時的に低血糖になるのですが、この時にアドレナリンが分泌されます。このアドレナリンがインスリン受容体などに障害を起こすのでインスリン抵抗性が高まります[*2]。

他にも、腸内環境を悪化させることによって炎症を引き起こし、この炎症がインスリン抵抗性を誘発することにもなるし、脂肪の蓄積によって糖代謝を悪化させるなど、いろんな方面からインスリン抵抗性を高めてしまうことになるんです。

3-1-2.高脂肪食

高脂肪食を続けていれば当然中性脂肪が増えます。中性脂肪が増えれば脂肪肝になるし、皮下脂肪や内臓脂肪も増える。その結果、GLUT4への伝達を阻害されてしまい、インスリン抵抗性が強くなります。

「高脂肪食ってどんな食事?」という人のために簡単に説明すると、焼肉とか中華とか脂肪分の多い食事です。ファストフードとか揚げ物なんかもそうですね。総じて現代人が好きな食べ物です。

こういうのばっかり食べてると細胞膜の質もどんどん悪くなって、インスリン受容体の機能も低下するので、さらにインスリン抵抗性が高まることになることになります。

3-1-3.栄養素の不足

栄養素の不足という視点で見ると、亜鉛、ビタミンD、クロムの不足はインスリン抵抗性を高めてしまう可能性があります。特に亜鉛とかビタミンDは普通に食事してても不足しやすいので注意が必要。この辺は個人的にはサプリに頼ったほうがいいかなと考えています。

ちなみに、亜鉛とビタミンDに関しては別記事で解説していますので、目を通しておいてください。

3-1-4.長期間の糖質制限

極端な糖質制限をすると、脳はエネルギー不足になるので、体がインスリンに反応しないようにして抹消でブドウ糖が消費されないようにする[*3]。つまり、インスリン抵抗性が高まるわけです。

また、長期間の糖質制限をすると、体は糖質に対して過剰に反応するようになります。少量の糖質でも高血糖を起こしやすくなるんです。すると、インスリンも大量に分泌されることになるので低血糖を起こしてしまう。

これがまたアドレナリン分泌につながり、さらなるインスリン抵抗性を起こしてしまうというわけです。

3-2.運動不足はインスリン抵抗性を高める

食生活だけではなく、運動不足によってもインスリン抵抗性が悪化してしまいます。もともと筋肉には血糖を取り込んでグリコーゲンとして貯蔵する働きがあるのですが、運動不足が続くとこの機能が低下[*4]して、血糖値が下がりにくくなってしまいます。

体に貯蔵されているグリコーゲンの量は、肝臓に約100g、骨格筋に約400g[*5]と言われているので、筋肉が占める割合はかなり大きいんです。筋肉のインスリン抵抗性が強くなるということは血糖値の調整にもかなり不利だということがわかります。

かといって、副腎疲労の人がいきなり過度な運動をしてしまうと、さらに体調を悪化させてしまうことも多いので、運動のやり方には特に慎重になる必要があります。この辺りはまた別記事で詳しく書きますね。

4.まとめ

夜間低血糖を起こすということは、その根底には「コルチゾール分泌量の低下」と「インスリン抵抗性」が潜んでいることが多いです。

慢性炎症があるならしっかりと治療をすることも大事だし、持続的なストレスへの対処も必要かもしれません。副腎疲労と低血糖はセットで考えたほうがいいかもしれませんね。

【参考文献】

*1.ダイエットとインスリン抵抗性 | 渋谷セントラルクリニック アンチエイジング・個別化医療

*2.褐色細胞腫における糖代謝異常

*3.糖質制限は本当に健康に良いのか|農畜産業振興機構

*4.糖尿病患者さんに、なぜ運動が必要か(後半)-糖尿病NET-運動療法情報ファイル

*5.Four grams of glucose – PMC

*6.ステロイド療法のエッセンス

*7.The inhibition of gluconeogenesis following alcohol in humans – PubMed

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ABOUT US
まつざき
臨床分子栄養医学研究会認定カウンセラー 分子整合栄養医学をメインに興味を持ちながら栄養関連、心理学関連の文献・論文を読みあさっています。Twitterフォロワー3.5万人突破。