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鉄サプリを飲む際の6つの注意点【分子栄養学】

女性は鉄サプリや鉄剤を飲んでいる方も多いと思いますが、私がカウンセリングで鉄サプリを勧める場合はかなり慎重に摂ってもらうようにしています。鉄は「諸刃の剣」。自分にとって大きな武器になることもあれば、自分自身を傷つけてしまうこともあります。

鉄サプリを飲んでいる人、これから飲もうと思っている人は、ぜひ一度こちらの記事を読んでいただいて、最低限の知識を持ってから取り入れることを強くお勧めします。

1.鉄の吸収を阻害する5つの食べ物

まつざき

こんにちは!臨床分子栄養医学研究会認定カウンセラーのまつざき@s_matuzakiです。最初に鉄吸収を阻害する食べ物を把握しておきましょう!

鉄はただでさえ吸収率が低い栄養素。鉄吸収を阻害する食べ物を把握しておいて、一時的に避けることも重要です。

鉄不足を起こしていない人はあまり気にする必要はないですが、すでに鉄不足に陥っている人にとっては改善を早める可能性が高くなります。

鉄の吸収を阻害する5つの食べ物
  1. お茶やコーヒーに含まれるタンニン
  2. 乳製品に含まれるカルシウムとカゼイン
  3. 大豆・おからなどの食物繊維
  4. 玄米に含まれるフィチン酸
  5. ハム・ベーコンなどに使われるリン酸塩

それぞれ解説していきます。

1-1.お茶やコーヒーに含まれるタンニン

タンニンとは、お茶やコーヒー、赤ワインなどに含まれているポリフェノールの一種で、渋みの成分です。タンニン自体は抗酸化作用があって身体に良い成分なのですが、鉄の吸収を阻害してしまう可能性があります。

もちろん量にもよると思いますが、鉄の吸収効率を少しでも高めたい場合は食事中や食事前後にタンニンを多く含む飲み物は避けておいたほうが無難かもしれません。

貧血の改善薬として有名な「マスチゲン錠」のサイトにも「お茶やコーヒー1〜2杯程度なら神経質になる必要はない1」と記載されていますし、タンニンを完全排除する必要はないですが、鉄不足でエネルギーが作れていない人はコーヒーを1日3〜4杯以上飲む人がけっこう多いので要注意です。

こういう方の場合には、エネルギー不足を誤魔化すためにコーヒーを飲んでるパターンがほとんどなので、ただ「コーヒーをやめて!」といっても簡単にはやめられません。エネルギー不足を改善するアプローチが先です。仮にコーヒーを無理やりやめたとしてもスイーツとかせんべいとかにシフトするだけです。

なので、エネルギー不足を少しでも補うために補食を摂ることからスタートするのがいいですが、どんなものを補食で食べればいいかわからないという人はこちらの記事に目を通しておいてください。

【夜間低血糖の人必見】補食におすすめの食品12選

ということで、鉄の摂取の前後1時間くらいはコーヒーや濃いお茶をなるべく避ける意識を持っておくといいでしょう。

タンニンを多く含む飲み物

コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶、ワイン、渋柿、栗の皮、ガラナなど…

ちなみに、タンニンは「非ヘム鉄」の吸収を阻害するけど「ヘム鉄」は気にしなくてもよい2という意見もあります。非ヘム鉄を摂る場合は特に注意しておく必要があるかもしれません。

1-2.乳製品に含まれるカルシウムとカゼイン

先ほどのタンニンは主に非ヘム鉄の吸収を阻害するとのことでしたが、カルシウムに関してはどうもヘム鉄・非ヘム鉄両方に影響を与えるようです。厚労省のサイトにはこんなふうに書かれています。

鉄吸収を阻害する他の物質とは異なり、カルシウムは非ヘム鉄およびヘム鉄のいずれのバイオアベイラビリティを低下させる可能性がある。

厚生労働省eJIM | 鉄 | サプリメント・ビタミン・ミネラル

ヘム鉄はHCP1というヘム輸送体から体内に取り込まれるので、他の栄養素の影響を受けにくいとされているのですが、カルシウムに関してはヘム鉄もダメなんですね。

ただ、先ほどの厚労省のサイトには、

鉄吸収を促進させる物質や阻害する物質の作用は、一般的な欧米型混合食によって減衰するため、多くの人では鉄摂取状態にほとんど影響はない。

厚生労働省eJIM | 鉄 | サプリメント・ビタミン・ミネラル

とも書かれているので、あまり神経質になり過ぎなくても良さそうですが、すでに鉄不足がかなり進行している人は念のため一時的にカルシウムと鉄を同時に摂ることを避けておいた方が無難でしょう。ちなみに、栄養療法の世界では、鉄と乳製品の同時接種はNGというのが常識になっています。

乳製品の場合はカルシウムの問題だけではなくて、「カゼイン」による腸の炎症も要注意です。

カゼインは腸の炎症を誘発しやすい物質。頻繁に摂っていると腸内に未消化物が多くなって下痢や便秘を起こしたり、リーキーガットを起こす原因にもなる場合があります。

鉄は炎症があると吸収できなくなるので、鉄の数値を上げなければいけない段階にいる人は一時的に乳製品を控えておいた方が改善は早いかもしれません。

1-3.大豆・おからなどの食物繊維

不溶性食物繊維は、鉄とくっついて排泄を促す作用があります。せっかく摂った鉄を外に出してしまう可能性が高いので、これから鉄の数値を高めたいという人はちょっと意識しておいたほうがいいかもしれません。

不溶性食物繊維を多く含む食品

豆類、雑穀、きのこなど…

大豆製品は不溶性食物繊維が豊富なので、鉄サプリと同じタイミングに食べるのは避けたほうがよさそうです。ちなみに、豆腐や豆乳になると食物繊維がかなり減るので気にしなくてもいいでしょう。

逆に水溶性食物繊維は鉄の吸収を促進してくれるそうなので、こちらは積極的に摂りたいですね。

水溶性食物繊維を多く含む食品

海藻類、野菜、果物など…

1-4.玄米に含まれるフィチン酸

フィチン酸は、玄米や大豆などの穀物の外皮に含まれていて、鉄の吸収を阻害する因子の一つです。

玄米にフィチン酸が含まれているのは有名ですが、大豆にも多く含まれています。「え?じゃあ納豆もダメなんですか?」と良く聞かれるのですが、納豆は発酵の過程でフィチン酸が失われるため、あまり気にしなくても大丈夫。

大豆は先ほどの不溶性食物繊維にも引っかかるので、鉄欠乏の人は意識的に食べるのを控えておいたほうが無難かもしれません。

1-5.ハム・ベーコンなどに使われるリン酸塩

リン酸塩はハムやベーコンなどの加工肉、プロセスチーズの乳化剤、練り製品などに使われていて、鉄の吸収を阻害することがわかっています。

ただ、これは原材料欄で見分けるのがなかなか難しい…。「リン酸塩」と表記されていることもあれば、「イーストフード」「調味料」「PH調整剤」「膨張剤」「かん水」「乳化剤」と記載されていることもあるそうで、あまり神経質になりすぎるのもよくないですが、この辺りの表記があったら極力避けるくらいの意識は持っておいてもいいと思います。

2.鉄と他のサプリの飲み合わせにも注意!

2-1.ビタミンE

ビタミンEは食事に含まれる量くらいならまったく気にする必要はないと思いますが、サプリメントとして高容量の摂取をする場合は要注意です。

詳しい機序はここでは省きますが、ビタミンEが持つ抗酸化作用によって、鉄の吸収に必要な「鉄吸収促進因子」を破壊してしまうとのこと。

基本的には鉄とビタミンEは8時間の間隔を空けることが推奨されていますので、私はごっちゃにならないように「朝は鉄」「夜はビタミンE」と決めて間違えないようにしています。もちろん朝と夜を逆にしてもいいですけどね。

2-2.亜鉛・カルシウム・マグネシウムなどのミネラル

あとはミネラル系です。特に亜鉛、カルシウム、マグネシウムをサプリで摂っている場合は要注意。

基本的にミネラル系はお互いに吸収を阻害する可能性が高いので、同時には摂らないほうがいいでしょう。カルシウムをあえてサプリで摂る人は今はあまり多くないとは思いますが、亜鉛やマグネシウムを飲んでいる人は多いので気をつけてください。

私の場合は先ほどもお話ししたように「朝は鉄」「夜はビタミンE」なので、必然的に「亜鉛は夜」ということになります。鉄と拮抗しちゃいますからね。

マグネシウムは種類にもよるけど、胃酸を中和してしまう可能性があるので、就寝前などの空腹時に飲むことが多いです。

ミネラル系はこうやって時間をずらして飲むことが重要です。

3.鉄サプリを飲むなら食前?食後?

「鉄サプリを飲むなら食前と食後のどちらがいいですか?」という質問もよくいただくのですが、基本的にサプリは食品なのでいつ飲んでも問題はありません。

ただ、効率を考えた場合はどうなのかというと、食前のほうが吸収率は高くなります。あるサイトには「食後又は食事中の投与では空腹時投与の60%の吸収率となる3」と書かれていました。食事と一緒に摂るとけっこう吸収率が落ちちゃうということです。

このサイトでは鉄剤の場合の話でしたが、おそらくサプリでも大差はないでしょう。

なので、吸収率だけを考慮したら「鉄サプリは絶対に空腹時がいい!」ということになりますが、僕はカウンセリングの際に鉄を勧める時は基本的に「食後がいいですよ」と伝えるようにしています。

というのも、鉄は胃腸に副作用を起こしやすいんです。経験した方ならわかると思いますが、胃の痛みやムカつき、吐き気など、けっこうきつい症状が出る人も少なくありません。

特にカウンセリングを受けるような方の場合、ただでさえ胃腸機能が低下している人が多いので、いきなり鉄サプリを空腹時に入れてひどい副作用に見舞われたら大変ですからね。そういった胃の不快感を避けるためにも、吸収効率は無視して食事中もしくは食後に飲んでみることをお勧めしています。

4.鉄は諸刃の剣!長期の摂取は慎重に!

鉄は過剰に摂り過ぎると炎症の元になります。つまり、余計な病気を引き起こす可能性もあるということです。ただ漫然と長期的に飲むものではないということはくれぐれも肝に銘じておきましょう。

できれば医療機関で血液検査をして、数値をモニターしながら鉄を摂るべきです。そして理想値に達したら摂取をやめる。もしくは量をうまく調節しながら摂るようにしたほうがリスクは回避できます。

血液検査では「フェリチン」という項目を測ってもらうようにしてください。この数値が急上昇していたら要注意。これに関しては詳しくは別記事で書きます。

大前提として、貧血をしっかり確認して、胃腸に病的なトラブルがないことを確認してから鉄サプリを摂ることをお忘れなく。もし仮に消化管のどこかにポリープがあって、そこから出血をしていることが原因で鉄不足になっていた場合、鉄サプリを飲むことで鉄の数値が見た目上改善してしまい、病気の発見が遅れてしまうという事態にもなりかねません。

消化管からの出血のように、鉄不足を起こす要因はいくつか存在します。これに関しても別記事でまとめたいと思います。

5.鉄はビタミンCとセットで摂ろう

鉄を摂る時はビタミンCとセットと覚えておきましょう。鉄の吸収率は、ヘム鉄のほうが高いのは有名ですが、それでも10〜30%程度と言われていて、非ヘム鉄はさらに低くて1〜8%程度です。

ビタミンCはヘム鉄も非ヘム鉄も両方とも吸収率を高めてくれる4そうですが、特に吸収率の低い非ヘム鉄にはビタミンCは欠かせません。

ある研究では、ビタミンCを25mgから1000mgに増量したところ、非ヘム鉄の吸収率が0.8%から7.1%に増加した5そうです。つまり、ビタミンCによって約9倍も吸収率が高まるということ。これは一緒に摂らなきゃもったいないですね!

ちなみに、1000mgというのは食事からだけではほぼ無理なので、吸収率を期待してビタミンCを摂るならサプリを活用することが前提ということになります。

6.薬との飲み合わせに注意!

鉄サプリや鉄剤を飲む際は、一部の抗菌剤を併用するとお互いに吸収されにくくなるというデメリットがあるので要注意です。

この点に関しては、医師に相談の上で鉄サプリを飲んでいいか、飲むならどのタイミングがいいかなども確認することをおすすめします。

7.まとめ

鉄サプリを飲む際の6つの注意点を最後にまとめておくと、

  1. 鉄吸収を阻害する食べ物を極力避ける
  2. 鉄吸収を阻害するサプリとの飲み合わせに注意する
  3. 鉄サプリを飲むなら念のため食後に飲む
  4. 鉄の長期摂取は避ける
  5. 吸収率を高めるためにビタミンCとセットで飲む
  6. 薬との飲み合わせに注意!

ということでした。

もし記事の内容でご質問があったら、コメント欄にご記入くださいね。それでは。

【参考文献】

  1. マスチゲン錠 Q&A|マスチゲン博士の貧血研究所 ↩︎
  2. 鉄 – オーソモレキュラー栄養医学研究所 ↩︎
  3. 鉄欠乏性貧血 ↩︎
  4. How to Increase Iron in Your Diet ↩︎
  5. Iron Absorption: Factors, Limitations, and Improvement Methods ↩︎

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まつざき
臨床分子栄養医学研究会認定カウンセラー 分子整合栄養医学をメインに興味を持ちながら栄養関連、心理学関連の文献・論文を読みあさっています。Twitterフォロワー3.5万人突破。